山下 雅彦 著

定価:1,430円(本体1,300円+税)

2023年6月上旬発売

四六判・並製・128ページ
ISBN978-4-909942-29-6 C0037

子どもを「人間として」「子どもとして」「個人として」尊重する子ども観の確立を!
「子どもリスペクト」は、『かめおか子ども新聞』と沖縄の「こどものみかたプロジェクト」との出合いをきっかけに、筆者の中に芽生えた思想です。子どもは「人として尊ばれ」「社会の一員として重んぜられる」と書かれた「児童憲章」と、子どもが権利の行使主体として登場した「子どもの権利条約」がその根底にあります。本書の副題は、「権利」と「当たり前」が英語では同じ“Right”であらわされることも意識しています。 

〈目次〉

はじめに
第1部 なぜ今、子どもリスペクトか?
 1 子どもの人間的尊厳への「リスペクト」運動を―地域に子どもの居場所はあるか
    はじめに― “コロナ休校” で問われた「子どもの居場所」
    子どもの居場所とは―地域から子どもが消えて
    沖縄の「こどものみかたプロジェクト」
    『かめおか子ども新聞』が拓く社会
    おわりに―地域から「子どもリスペクト」運動を
 2 子ども観の転換を―〈遊び〉と〈文化〉が子ども時代を豊かにする
    『うっせえわ』と『学生節』―子どもの “レジスタンス” は時代を超えて
    軍歌をも嗤った戦時下の子どもの替え歌
    遊び惚けた子ども時代の幸せ―リンドグレーンと「ちいちゃん」
    子ども観の転換を―31条ムーブメントと「子どもリスペクト運動」をつなげて
 3 めざすのは「子どもリスペクト運動」―第67回子どもを守る文化会議(2021年)に参加して
第2部 子どもリスペクトとは何か
 1 知っているようで知らない「子どもという生き物」
    はじめに
    競争主義的な社会と教育から子どもを解放し、子ども時代を守ること
    子どもの「聴かれる権利」
    授業も変わるはず
 2 子どもへのまなざしを問う―まだ生きている「子どものくせに」
    「せんそうやめて」―5歳児の訴え
    「子どものくせに」あるある(1)―家庭編
    「子どものくせに」あるある(2)―学校編
    「子どものくせに」あるある(3)―地域編
 3 『かめおか子ども新聞』の秘密―竹内博士編集長に聞く
 4 子どもの「かわいさ」
    「子どもがかわいいなんて…」
    「かわいさ」「けなげさ」に感動する教師
    「宮田がよかった」
    「こまったときはオレにいってね」と3歳児が…
    「かわいい」にも年少者へのリスペクト
 5 子どもは走る、叫ぶ、踊る―そのムダで必要な動き
    ♪「走る走るオレたち」
    子どもは「楽しいことを求めて飛び回るミツバチ」
    子どもは「ムダな動きのかたまり」、しかしそれは「必要なムダ」
    「たくましき原始子ども」
    子どもの「おバカ行動」
 6 好きに過ごす権利―遊んだり休んだり…
    「子どもリスペクト」の要素としての条約31条
    こうして子どもの遊び場は奪われた
    学生たちの宝物のような子ども時代
    生徒総会で要求した「休息」や「遊び」の保障
    子どもの自由の尊重、大人の問題こそ
 7 聴かれる権利― “子どもに” ではなく、“子どもと”
    子どもからの異議申し立て―私の場合
    子どもとのかけあいの妙
    “子どもに” ではなく、“子どもと”(コルチャック)
    「考え考え言う」山下少年を弁護する
 8 競争主義が傷つける子どもの尊厳
    国連から競争主義の是正を勧告され続けている日本
    「私は勉強するために生まれてきたんじゃない!」
    受験本位の生活が子どもを追い詰める
    1960年代から変わらない競争と分断のシステム
    個性と友情をはぐくむ運動会
 9 「こども基本法」「こども家庭庁」の根本問題
    ちょっと不気味な「こどもまんなか社会」
    「包括的な子どもの権利保障法」といえず、「独立した監視機関」もない
    子どもといえば「指導」なのか?―国連での追及
    こんなことにも添削が―遠藤少年の悔しさ
    子どもの権利条約の観点が欠落している
 10 子どもは「地域の宝」いうけれど…
    20年ぶりの赤ちゃんは「みんなのアイドル」
    私は「捨て子」だった?!
    「家庭教育支援」という名の “落とし穴”
    菊陽町の文化が子どもを育てる―吉野流子育ての極意
 11 「指導(しつけ)のため」という“大義名分”を問い直す
    熊本市の放置された体罰問題
    “人権は譲れない” ―「指導」や「しつけ」それ自体を問い直す
    子どもが大人にものいうことのハードルは高い
    ※子どもリスペクト研究会のご案内
 12 「子どもリスペクト」が “当たり前” の日常へ
    子どもと響きあって輝く〈教師という仕事〉
    クリニックでの親子の “攻防戦”
    「ママは育てるのがじょうずだねぇ」
    「子どもリスペクト」が〝当たり前〟になる日を夢見て
おわりに
子どもリスペクト研究会(略称:子リス研)のご案内

〈著者紹介〉
山下 雅彦(やました まさひこ)
東海大学名誉教授
1953年、高知県生まれ。
京都教育大学教育学部教育学科卒業、東京都立大学大学院人文科学研究科修士課程修了。
専門は、教育学・社会教育学、子ども・子育て論。
2019年3月、東海大学九州キャンパスを定年退職。
子どもの権利条約市民・NGOの会共同代表、子どもの権利条約31条の会世話人、日本子どもを守る会理事、子どもリスペクト研究会会長。
特定非営利活動法人学童保育協会理事、くまもと子育て・虐待防止ネットワーク研究会代表、登校拒否・不登校に学ぶフレンズネットワークくまもと顧問、一般社団法人熊本私学教育支援事業団理事、平和が一番!東区の会代表、立憲主義を未来へつなげる大学人の会くまもと世話人。
熊本子育て教育文化運動交流会元事務局長。熊本市次世代育成支援行動計画策定委員会副座長、熊本市男女共同参画会議元会長。第61回社会教育研究全国集会(2022年)実行委員長。
主な著書:『子どもの中の力と希望―「子どもの権利条約」がつなぐ子育て・教育・文化―』(ミネルヴァ書房、1998年)、『子育て再発見―それでもやっぱり、子育ては楽しい―』(ミネルヴァ書房、2006年)、『子育てにマニュアルなし!』正/続(共著。かもがわ出版、2004年/2009年)、『みんなで希望の子育てを』(新婦人しんぶん連載のブックレット化・私家版、2007年)、『うばわないで!子ども時代―気晴らし・遊び・文化の権利(子どもの権利条約第31条)』(共著。新日本出版社、2012年)、『遊びをつくる、生活をつくる。―学童保育にできること―』(共著。かもがわ出版、2017年)、『ゆっくりしたい!あそびたい!!遊びと文化と自由な時間』(共著。Art.31、2018年)、『平和と子どもの幸せを求めつづけて-困難な時代に子育て・教育の希望をさぐる-』(かもがわ出版、2019年)。
その他、企画・編集協力・解説を担当した藤原朱美著『わたしの愛しい子どもたち―朱美先生の子どもエッセイ―』(本の泉社、2018年)、『山ちゃんのオランダちょい紀行 Yama-chan’s Short Trip to the Netherlands』(私家版ブックレット、2020年)がある