山田恵子 著
定価:3,300円(本体3,000円+税)
2022年2月刊行
A5判・上製・240ページ
ISBN978-4-909942-19-7
本研究は、養育が困難な家庭の子どもの不登校の問題、その学習権保障にあたって、スクールソーシャルワークの実践が欠かせないこと、そしてスクールソーシャルワークはどうあるべきかを探求する実践的研究である。
そこでは、福祉、教育、文化等にまたがる領域に位置づくスクールソーシャルワーク研究の学際性とともに、子ども理解を深めること、子どものしあわせの実現のための「子どもの権利」を基盤とする子ども支援の必要性を改めて確認できる。
筆者は日々実践家として活動する中で、いかに「子どもの権利」を具体化するかを模索してきた。支援の現場では新たな実践を生み出しており、実践には既存の理論ではおさまらない、豊かなものがあるのではないかと考えている。本研究は、いくつかの実践を手掛かりに、実践を広く捉えることを心掛けつつ、実践を煮詰め、実践の豊かさから理論を形成しようとするものである。――「序章」より
【著者紹介】
山田 恵子(やまだ けいこ):立教大学コミュニティ福祉学部助教、千葉大学教育学部附属学校園スクールソーシャルワーカー、東京都江東区教育委員会スクールソーシャルワーカースーパーバイザー
【目次】
序章:長期不登校児への学習権保障とスクールソーシャルワークのあり方を求めて
1.問題の設定
2.研究の対象と視点
3.先行研究と本研究の課題
4.本研究の方法
第1章:「家庭訪問論」子どもや親と出会い、関係をつむぐ――「家庭訪問」から「家庭滞在」へ
1.「家庭訪問」を取り上げるのは
2.同和教育運動の教育実践の振り返り
3.学校教育における「家庭訪問」
4.スクールソーシャルワーカーによる「家庭訪問」
5.「家庭訪問」・「家庭滞在」をスクールソーシャルワークに位置づける必要性
6.教育学における「家庭訪問研究」への問いかけ
第2章:「遊び・生活文化論」子どもの主体性を引き出す――「遊び」の可能性
1.スクールソーシャルワークで「遊び」を取り上げるのは
2.子どもの「生活文化」から考える「遊び」
3.スクールソーシャルワークにおける「遊び」の実践
4.子どもにとっての「遊び」と「発達」の本質
5.「遊び」の可能性へ注目する必要
第3章:「ケアリング論Ⅰ」子どもを学校につなぐⅠ――スクールソーシャルワークと教師の「ケアリング」
1.学校におけるケアを取り上げるのは
2.ケアおよびケアリング
3.学校教育におけるケアリング
4.スクールソーシャルワーク実践の分析
5.スクールソーシャルワーカーと教師の協働の中にある関連性
第4章:「ケアリング論Ⅱ」子どもを学校につなぐⅡ――ケアリングを土台とする校内体制づくり―同和教育実践を手掛かりに
1.「河瀬実践」を取り上げるのは
2.「河瀬実践」にみるケアリング――『人間になるんだ(上)生活指導』より
3.「『河瀬実践』にみるケアリング」を可能にしたもの――河瀬氏へのインタビューから
4.スクールソーシャルワークにおける校内体制づくりへの示唆
第5章:「ネットワーク論」子どもの育ちをささえる地域につなぐ
1.地域につなぐスクールソーシャルワーク実践
2.地域における子どもの「学び」と子どもをささえる「かかわり」
3.学校と家庭と地域をつなぐ
第6章:「教育史の中に探る」スクールソーシャルワークの歴史的水脈と今後
1.生活綴方教師「鈴木道太」を手掛かりに
2.鈴木道太の生活綴方教育実践にみるスクールソーシャルワークの水脈
3.スクールソーシャルワークの今後――後期生活教育論争を手掛かりに
4.教育と福祉の協働および実践と理論の関係
終章:スクールソーシャルワークの発展に向けて
1.本研究への取り組みを通して
2.本研究から浮かび上がるスクールソーシャルワークの独自性
3.実践の理論化――その方法論を探る
4.教育、福祉、文化の統合――「教育福祉」から「教育福祉文化」へ
5.今後の研究への視座
あとがき
参考文献一覧
索引