増山 均 編著
定価:本体3,600円+税
2021年3月刊行
A5判・上製・372ページ
ISBN978-4-909942-11-1 C0037
*電子書籍版(丸善雄松堂 eBook Library、紀伊國屋書店 KinoDenより配信)は2021年4月刊行
「小学校教員」「児童福祉司」「子ども会指導者」「教育評論家」「短大教授」として多彩な経歴から子どもと関わり、先駆的な仕事を果たした鈴木道太の歩みと業績をトータルに捉えた、初めての研究書を刊行!
鈴木道太(1907-1991)は宮城県白石市で生まれ、宮城師範学校を出て小学校教員となり、生活綴方教育・北方性教育運動で活躍した。しかし1940(昭和15)年、治安維持法違反容疑で検挙、実刑を受け1943(昭和18)年まで獄中生活を送る。出獄後は教職を離れ、1944(昭和19)年に大河原町役場の書記として再出発し、1948(昭和23)年からは宮城県の児童福祉司として児童相談所の仕事に従事した。児童福祉および青少年の保護育成の仕事を開拓しつつ、執筆活動・講演活動に精力を注いだ。執筆した著作は50冊以上、雑誌掲載記事を含めると膨大な量になる。その業績は教育分野のみならず、福祉と文化の領域も含んだ総合的視野と地域づくりへの展望にみちたスケールの大きな先駆的業績であった。鈴木道太没後30年(2021年3月)に合わせ、鈴木道太の再評価と研究の促進を図るべく刊行するものである。
目次
序論 「鈴木道太文庫」の価値と鈴木道太研究の今日的意義 増山 均
第1部 戦前・戦中編――綴方教師としての活躍から弾圧へ
第1章 鈴木道太の教育論と生活綴方の展開――戦前期を中心にして 増山 均・齋藤史夫・山田恵子
第2章 鈴木道太における教育と福祉――「はみ出した教育」と福祉へのアプローチ 山田恵子
第3章 『赤い鳥』と生活綴方――鈴木道太の実践を通して考える 増山 均
第4章 治安維持法による弾圧は何をもたらしたのか――未発表原稿「裁かれた教室」と裁判記録から読み解く 笹島康仁・増山 均
第2部 戦後編――町役場職員・児童福祉司としての出発
第5章 鈴木道太と地域文化創造――「新しい土の文化」をかかげて 齋藤史夫
第6章 児童福祉の開拓者としての鈴木道太――「キャロル女史の講義」ノートと児童相談所におけるケースワークの草分け 山田恵子
第7章 青少年保護・健全育成施策における鈴木道太の非行防止論 竹原幸太
第8章 鈴木道太のしつけ論・家庭教育論 増山 均
第9章 鈴木道太における子どもの権利認識と「子ども会論」 増山 均
第3部 資料編
鈴木道太年譜・年表
鈴木道太著作一覧
鈴木道太単著・編著書一覧
鈴木道太裁判記録
あとがき
索引
【編著者略歴】
増山 均(ましやま・ひとし)
1948年 栃木県宇都宮市生まれ
1972年 東京教育大学文学部哲学科卒業
1978年 東京都立大学大学院人文科学研究科博士課程単位取得満期退学
1982年 日本福祉大学女子短期大学部講師、助教授、同大学社会福祉学部教授
2001年 早稲田大学文学部教授、早稲田大学文学学術院教授を経て
2018年~早稲田大学名誉教授
専門は、社会教育学、社会福祉学。子育て問題、教育・福祉問題、子どもの人権と文化問題など、総合的視点から「子ども研究」を進めている。
現在日本学童保育学会代表理事、日本子どもを守る会会長、子どもの権利条約市民NGOの会共同代表など。
著書は、『子ども組織の教育学』(青木書店)、『子ども研究と社会教育』(青木書店)、『地域づくりと子育てネットワーク』(大月書店)、『子育て新時代の地域ネットワーク』(編著、大月書店)、『教育と福祉のための子ども観』(ミネルヴァ書房)、『子どもの世界と福祉』(共編著、ミネルヴァ書房)、『「子どもの権利条約」と日本の子ども・子育て』(部落問題研究所)、『子どもの参加の権利』(共編著、三省堂)、『子どもの文化権と文化的参加』(共編著、第一書林)、『余暇・遊び・文化の権利と子どもの自由世界』(青踏社)、『国連子どもの権利条約と日本の子ども期』(共著、本の泉社)、『子育て支援のフィロソフィア』(自治体研究社)、『学童保育と子どもの放課後』(新日本出版社)、『ゆとり・楽しみ・アニマシオン』(旬報社)、『アニマシオンが子どもを育てる』(旬報社)、『アニマシオンと日本の子育て・教育・文化』(本の泉社)、『ファンタジーとアニマシオン』(共編著、童心社)など多数。
【執筆者一覧】
齋藤史夫(さいとう・ふみお)東京家政学院大学准教授
早稲田大学大学院文学研究科博士後期課程満期退学。日本学童保育学会紀要編集委員。日本子どもを守る会『子ども白書』編集委員会事務局長、子どもの権利条約市民NGOの会専門委員。『うばわないで!子ども時代』(共編著、新日本出版社)、『市民力で創る子育てとコミュニティ』(共著、Art.31)など。
笹島康仁(ささじま・やすひと)ジャーナリスト、フォトグラファー
高知新聞記者を経て、2017年に独立。早稲田大学大学院文学研究科教育学コース修士課程修了。共著に、高知新聞取材班『秋のしずく敗戦70年といま』(高知新聞社)、Yahoo!ニュース特集編集部編『「わたし」と平成激動の時代の片隅で』(フィルムアート社)など。
竹原幸太(たけはら・こうた)東京都立大学准教授、博士(文学)
日本犯罪社会学会編集委員会委員。『菊池俊諦の児童保護・児童福祉思想に関する研究――戦前・戦中・戦後の軌跡と現代児童福祉法制への継承』(早稲田大学出版部)、『教育と修復的正義――学校における修復的実践へ』(成文堂)、『失敗してもいいんだよ――子ども文化と少年司法』(本の泉社)など。
山田恵子(やまだ・けいこ)早稲田大学文化構想学部講師(非常勤)、博士(文学)
千葉大学教育学部附属学校園スクールソーシャルワーカー。博士学位論文「スクールソーシャルワークの実践と理論――養育困難家庭の不登校児の学習権保障をめぐって」(早稲田大学)、『子どもの未来を守る――子どもの貧困・社会排除問題への荒川区の取り組み』(分担執筆、三省堂)。